私が産業カウンセラーの資格を取得したのが2017年。取得前から一般企業に勤務しており、現在も同じ会社に勤めています。企業では人事労務管理を担当する部署に所属し、日常業務と並行して、現在、産業カウンセラーとして主に3つの活動をしています。
しかし、資格取得後すぐに産業カウンセラーとして企業内での仕事がスムーズに運んだわけではありません。知識もなくどう進めたらいいのかわからないとき、日本産業カウンセラー協会の方に相談しアドバイスをいただいたり、くじけそうになったとき養成講座で知り合った仲間から助言をもらったりするなどして前に進んでいきました。今、会社で産業カウンセラーとして活動ができるのは、このかけがえのない仲間の出会いがあってこそ。というのも講座の中で学んだ“自己理解を深めるということ”について、私自身とまどい苦しい期間がありました。そのとき仲間に自分自身を受け入れてもらえたことが私の自信となり、私が他の方を受け入れられることにつながる大きな学びがあったからです。今ではこの大切な仲間に研修を依頼したりすることもあります。
会社での産業カウンセラーとしての3つの活動ですが、1つめは事業場内産業保健スタッフとして、休職者の復職支援や安全衛生委員会の活動に携わっています。私が資格を取得した当初、休職の方がひとりいらっしゃいました。社内ではメンタル不調の方にどう対処したらいいのかわからない状態で、支援体制が整っていないという状況にありました。そこでまずは講座で学んだ基本的態度をもって話を聴かせてもらうということから始め、面談を何度か実施しました。関係構築をしながらその方の体調が安定してきて復職の意志が明確になってきたころに、その後の復職と定着をめざして外部の資源、職業選択のリワーク支援を活用しながら主治医や産業医などと連携を取り合い、関係部署への理解をうながす支援を行いました。復職後も変わらず関係各所との連携を取り、定期的に面談を行ったり上長との面談に同席したり、必要なときには通院同行もし安定した勤務ができるような支援をしています。
この復職支援が、2つめの従業員定着支援のための相談業務につながりました。もともと社内には相談窓口があったのですが、実態としては機能していないという状態でした。私は資格取得後、相談窓口の室員になり、相談室の機能を充実させ認知してもらうために、まずは新入社員のフォロー面談を実施することにしました。新入社員の面談を行っていると、その上長から「実は指導に苦戦しています」、「コミュニケーションのとり方がわからないのです」という相談が増え、自然と上長やその周辺の社員からの相談も多くなりました。相談が増え始めると必然的に相談にかける時間も多くなり、従業員の定着につながっているという声がある一方で、相談ばかりされていては業務に支障が出る、そもそも産業カウンセラーというのは企業の中に必要なのか、というような声も多くあがってくるようになりました。
そこで取り組んだのが、3つめの制度の整備や規定等の策定です。まずは環境整備に取りかかりました。働きやすい職場づくりをみんなで考えてもらうために各部署に働きかけ、職場環境改善の取り組みにつなげています。同時に復職支援に関するガイドラインをつくり、就業規則や規定類の策定や見直しもはかりました。仕組みを整え行動してもらうことで、社内でも産業カウンセラーとしての活動を認めてもらえるようになったのだと思います。仕組みができたからこそ、活動がしやすくなったのだとも考えています。今、ようやく産業カウンセラーとしての活動の幅が大きくなってきました。同時に人事労務管理の日常業務も広がりがあり、最近では採用や研修の担当も行っています。人材育成や人材活用という視点でも自分の役わりを考えるようになりました。従業員のキャリア形成支援の重要性を考えたとき、自分に何ができるかということを考えて、2018年にキャリアコンサルタント養成講座を受講しました。今後は産業カウンセラーとしてさらなる職場環境改善をめざしていくこと。キャリアコンサルタント資格取得後は従業員のキャリア形成にかかる相談支援など幅広くアプローチしていけたらと考えています。